パスタ好きの方なら聞いたことがあるかも知れないパスタ、キタッラ(chitarra)。
キタッラの本場より、このパスタについて説明したいと思います。
キタッラ(スパゲッティ・アッラ・キタッラ)とは?
キタッラとはイタリアではスパゲッティ・アッラ・キタッラや、マッケローニ・アッラ・キタッラとも呼ばれる、イタリアのアブルッツォ州のパスタです。
キタッラ作りの道具
キタッラとはイタリア語でギターと言う意味で、四角い木の枠に弦を貼ったギターのようなキタッラ(chitarra)という道具を使って成型します。イタリアでもアブルッツォ州のパスタと言えばキタッラ、というほどよく知られているパスタなんですよ。
このキタッラの上に薄く伸ばしたパスタ生地を乗せて麺棒で押し切るように成型するのが特徴で、出来上がったパスタは断面が四角いスパゲッティのような形になります。
本来はこの道具自体のことをキタッラと呼びますが、出来上がったパスタもキタッラと呼ばれます。
もう一つの隠れた主役、木の麺棒
そしてイタリアのノンナ(おばあちゃん)達なら誰でも持っているパスタを打つ時に使う道具、麺棒。
生地の成型には速く簡単に仕上がるパスタマシンを使ってももちろんよいのですが、イタリアではこだわり派の人達はいまだにこの木の麺棒を使って生地を伸ばしていきます。
その理由は麺棒の表面にある自然素材ならではのわずかなデコボコ。このデコボコのおかげでパスタの表面がざらついたものとなり、それがソースがよりよく絡む美味しいパスタを作り上げるのです。
それにイタリアのノンナ達のパスタを打つ時の鮮やかな手さばき。パスタマシンをいちいち使うよりももっと速いスピードで作り上げていくので本当に見事なものですよ。
キタッラに使われる粉の種類
伝統的なキタッラ作りに使うのは、デュラム小麦のセモリナ粉で、このセモリナ粉に卵を混ぜ合わせたものがキタッラの基本の生地。卵を加えることで食感が少しソフトになり、卵麺独特の美味しいパスタとなります。
北イタリアでは、パスタ作りに日本の中力粉に相当する軟質小麦の小麦粉を使用するのに対して、南イタリアでは硬質小麦の一種で、たんぱく質含有量の多いこのデュラム小麦を使用するのが特徴。デュラム小麦のセモリナ粉で作るパスタは歯ごたえ、味、香りともにしっかりとしたものが出来上がります。
セモリナ粉とは?
セモリナ粉とは、イタリア語ではセーモラ(semola)と呼ばれるデュラム小麦を挽いた粉の事で、硬質小麦がゆえに、通常の小麦粉よりもザラザラとしたやや粗い粉となります。
イタリアでは一般的な小麦粉のことをファリーナ(farina)と呼びますが、この挽きの粗いセモリナ粉はファリーナ(小麦粉)には分類されず、セーモラ(セモリナ粉)と呼ばれます。
このセモリナ粉を再度挽いて粒子を細かくしたものはセーモラ・リマチナータ(semola rimacinata/セモリナ粉の2度挽粉)としてイタリアでは一般のスーパーでも販売されていて、粒子の粗いセモリナ粉よりも扱いやすいので、これもよくキタッラ作りに使われるんですよ。
セモリナ粉は軟質小麦の小麦粉に比べて少々扱いにくく、捏ねるのに力が要りますが 出来上がったパスタはやはり格別です。
キタッラのソースの定番、ラグーソース
そしてこのキタッラに合わせる定番はなんと言ってもラグーソース。
ラグーソースの定番は牛ミンチとサルシッチャをトマトピューレで煮込むソース。昔から羊牧の盛んなアブルッツォ州では、ラム肉のラグーソースと合わせたりする場合も多く、特に内陸部ではトマトを使わないラム肉の白いラグーソースとも合わせられたりもします。
そしてトマトのラグーソースに風味を増すために加えたのは、乾燥させたスイートパプリカ。アブルッツォではよくこの乾燥パプリカが郷土料理に使われていて特にアブルッツォ州、アルティーノ(Altino)産のパプリカは有名。今回はこれをパウダー状にしたものを使用しています。
ラグーソースはそれほど難しいソースではないのですが、コツとしては弱火でじっくりと煮ること。そして、あまり少量で作ってもやはり旨味やコクが出にくいので、作るときは最低でも4人分ほどから作るのがお勧め。
他にもキタッラには羊のミルクから作るペコリーノ・ロマーノを使ったパスタ、カチョ・エ・ペペにもピッタリです(クリーミーな本格カチョエペペの作り方はこちらからどうぞ)。
キタッラとラグーソースの作り方・レシピ
キタッラの作り方
材料 (4人分)
- セモリナ粉 300g
- 卵 3個
- EVオリーブオイル 少々
- 塩 一つまみ
- 打ち粉(強力粉) 少々
作り方
動画レシピ
まずはこちらの1分動画をどうぞ。下には写真で解説しています。
写真レシピ
1)ボウルに粉と卵、塩を入れてオリーブオイルを一回り加える。フォークで卵を崩しながらセモリナ粉と混ぜ合わせる。ある程度混ざったら手で一塊になるまで捏ねる。水分が足りなければ水少々を足す。※水を足すときは少量ずつ様子を見ながら入れて下さい。ボソボソとして捏ねにくい、くらいの状態で止めておかないと生地を休めた後に、緩くなり過ぎてコシの無いパスタになっていしまします。
2)生地を打ち粉をした台に移し、滑らかになるまで力強く捏ねる。最初はなかなかまとまりにくいですが次第に滑らかになってきます。
3)ボウルに生地を入れて濡れ布巾を被せて30~1時間ほど休ませる。夏場は冷蔵庫でそれ以外の季節は常温で大丈夫です。
4)生地を軽く押し広げて8等分にし、丸める。
5)打ち粉をして厚さ2㎜、13㎝×20㎝ほどの長方形に成型する。
6)キタッラの上に生地を乗せて打ち粉をまぶし、麺棒で押し切るようにカットする。カットしたパスタはくっつかないように打ち粉をしておく。
ラグーソースの作り方
材料(4人分)
- トマトピューレ 650㎖
- 牛挽肉 200g
- サルシッチャ(無ければ豚挽肉)150g
- 赤ワイン 70㎖
- 人参 1本
- セロリ 1本
- 玉ねぎ ¹⁄3個
- ニンニク 1片
- スイートパプリカパウダー(あれば)小さじ1
- ローズマリー 少々
- EVオリーブオイル
- 塩
作り方
1)人参、玉ねぎ、セロリ、ニンニクは合わせてみじん切りにする。ローズマリーの葉も合わせておく。
2)フライパンにオリーブオイルをひき、みじん切りにした野菜を弱火で数分炒める。
3)牛挽肉とサルシッチャの皮を取り除き、細かくちぎったもの(もしくは豚挽肉)をフライパンに加え、軽く炒める。
4)赤ワインを加え、アルコールを飛ばすように強火で炒める。
5)トマトピューレ、パプリカパウダー、塩を加えて弱火にし1時間以上じっくりと煮る。※ラグーソース作りに焦りは禁物です。弱火でコトコト、愛情込めて、が美味しいラグーソースを作る秘訣です。
6)茹でたパスタとソースを大きなお鉢、または鍋等に合わせて入れ、よく混ぜてパスタにラグーソースを馴染ませてからお皿に盛って出来上がり!※パスタは手打ちの生パスタなので3-4分ほどで茹であがります。