多くの人が言うように  “人生とは不思議なもの”  だ。

日本の田舎で育った私が 同じく田舎育ちのイタリア人の夫と娘と暮らすのはイタリアの都会、ミラノ。

ミラノと言っても特におしゃれな生活をしているわけでもなく、公園、メルカート、家, の往復の日々。

そんな日常でも笑ったり、怒ったり、泣いたり、そしてまた笑ったり、いろいろと毎日起こるものだ。

好きなことは自然の中を歩くこと。

子供が生まれる前は夫婦でトレッキングなどをしたものだけど、最近はもっぱら子供と一緒に森の中を散歩、のお出かけがほとんど。

ヒールの靴は母になる前は好きでよく履いていたけれど今は大事に箱にしまわれていつか履かれる日を待っている。

たまに箱を開いて、磨いたり、眺めたりするけれど、

そんな素敵な靴達を履く機会は親戚や友人の結婚式以外は、残念ながら今のところ無い。

結婚するまでは特に料理好き、というわけではなかったけれど畑が家の前にあって夏に食べるトマトは太陽の下で完熟になったものを夕食前に採ってきて食べるのが当たり前の環境で育ったので 

“三つ子の魂百まで” というか、

自然なものを美味しくいただく、というのが知らずと身についていたのだと思う。

不思議なことに夫の育った環境もよく似ている。

トマトはアンナ叔母さんの畑で南イタリアの太陽をいっぱい浴びて育ったものをいつも食べていた。

おまけに職人気質の厳しいバリスタの父親のもとで育ったので味にはめっぽううるさい

そんな ”本当に美味しいもの” に囲まれて育ったので料理をする楽しみを発見してからは二人で今日は何を作ろうかとあーだ、こーだいいながら小さなキッチンでメニューを考えるのが我が家の日常。

(おまけに最近は娘までお手伝いをしようと入り込んでくるのでただでさえ狭い我が家のキッチンは身動きがとれなくなる)

そしてもう一つ我が家の大事な要素は ”旅” 。

「旅に出る理由は?」と聞かれたら、

“素敵な景色を見たい”、”そこでしか食べれない美味しいものを食べたい” 

はもちろんだけれど

“たまにミラノの喧噪を離れてゆっくりとしたい” なんて理由もあったりする。

とにかく理由はいろいろあるけれど 暇さえあれば旅に出ている。

そんなミラノの街に暮らす とある一家の食卓の記録と旅の記憶。

さぁ、次の風は私達をどんな素敵な場所へ連れて行ってくれるのだろうか。

美味しい出会いを期待して!

Milano,  Settembre  2017

Mayumi