【本場式を徹底解説!】 本格カチョ・エ・ぺぺ

カチョエペペ レシピ CACIO E PEPE

アマトリチャーナカルボナーラと並んでローマの3大パスタとして知られるカチョ・エ・ぺぺ(cacio e pepe)は 一度食べるとその美味しさ、シンプルさにはまる人も多いパスタ。ここでは カチョエペペを 美味しく作るコツ失敗しやすい点 について詳しく解説していきます。

カチョエペペとは?-美味しく作るコツ

イタリア語でカチョ(cacio)とはチーズ、ぺぺ(pepe)は胡椒と言う意味でカチョエペペはその名の通りすりおろしたチーズと黒コショウをパスタに和えたシンプルな一品。このパスタ、とてもシンプルなんだけれど本場のイタリアでも 簡単なようでいて難しいパスタの一つ と言われています。

“溶けたチーズがクリーミーにならずにボソボソとした塊となってしまい、うまくパスタと絡まない”、というのが一番代表的な失敗。

本場イタリアでカチョエペペに使うチーズは?

まず美味しいカチョ・エ・ペペを作るのに絶対必要なのはペコリーノ・ロマーノという羊のミルクから作られる塩分がよくきいている硬質タイプのチーズ。これを一人分につき30-50gほど使用すること。かといって多すぎると今度は塩分が効きすぎるので50g程度が適量です。

ペコリーノ・ロマーノ

なぜこのペコリーノ・ロマーノが必要かと言うと、まずは羊のミルク独特の風味、味がこのカチョエペペにおいて欠かせないこと、そして他の硬質チーズの代表であるパルミジャーノ・レッジャーノと比較してクリーミーさにおいても差が出ます

ペコリーノ・ロマーノをすりおろしているとよくわかるのだけれど、パルミジャーノに比べて体温でねっとりと少し溶け出してくる質感があります。これがあのクリーミーなソースに必要というわけ。

レシピの後にはその辺の化学的な説明を書いてみたので興味があれば読んでみて下さい。

(左)ペコリーノ・ロマーノ、(右)パルミジャーノ・レッジャーノ(イタリアで一般的に出回る24ヶ月熟成タイプ)。ペコリーノ・ロマーノの方が少し白っぽく質感もねっとりしています。
Fettuccine Alfredo アルフレッドパスタ フェットゥッチーネ・アルフレード
ペコリーノ・ロマーノは味の強いチーズですのでイタリアでもパルミジャーノと混ぜて使う人もいます。ただし、ペコリーノ・ロマーノを全く加えず、パルミジャーノのみで作るパスタはイタリアではカチョエペペとは呼ばれません。パスタ・イン・ビアンコと料理名が変わるんですよ。このパスタ・イン・ビアンコについては “本当の”フェットゥチーネ・アルフレード のページで詳しく書いています。興味のある方はどうぞ!

ちなみに、イタリアって流石にチーズの本場なだけあって、選び放題なんです。

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カチョエペペに使うパスタはどんなもの?

そして使うパスタはスパゲッティなどのロングパスタが定番。

今回はトンナレッリ(tonnarelli)という生パスタを使用しています。カチョ・エ・ペペのパスタと言えばこのトンナレッリが代表的。やはり生パスタはクリーミーなソースによく合います。

トンナレッリ(キタッラとも呼ばれます。キタッラについて詳しくはこちら

ただ慣れないうちは乾燥パスタの方が作りやすいかもしれません。というのは、チーズをすりおろす工程以外はパスタを茹でている間にこなす必要があるから。生パスタだとゆで時間がだいたい5-6分なので手際よくやらなければならず、慣れないうちは結構慌ただしいかもしれません。

カチョエペペの重要ポイント、胡椒!

それともう一つ、忘れがちなのが胡椒の香りをしっかりとパスタにつけること

ゆで汁にまず胡椒の香りをつけて、そのゆで汁でパスタをアルデンテに仕上げると胡椒の香りが抜群に引き立ちます。使う胡椒はぜひ粗びきの黒コショウを。出来れば粒胡椒を自分で砕くともっといい香りがします。

カチョエペペに合わせるおススメのメインディッシュは?

このカチョ・エ・ペペをプリモピアットにしてセコンド(メインディッシュ)を同じくローマの郷土料理、サルティンボッカにすると気分はもうローマの街角のトラットリア!

サルティンボッカとは?
サルティンボッカ

このカチョエペペと合わせて食べたいとっても美味しいローマの料理、サルティンボッカの美味しい作り方のページです。

材料もシンプルでとっても簡単に出来るので、ぜひセコンド(メインディッシュ)に作ってローマっ子気分を味わってみては?

それでは下のレシピで詳しい作り方を解説しますのでどうぞチャレンジしてみて下さい。

きっと本場で食べたあの味を再現できますよ!

カチョエペペの作り方・レシピ

材料 (2人分)

  • ペコリーノ・ロマーノ 100g(ソース用)+ 20g ほど(仕上げ用)
  • 黒コショウ(粗びき) 適量
  • 好みの生パスタ 300g (乾燥パスタなら200g)

作り方

カチョエペペ

1)ペコリーノ・ロマーノ100gをボウルにすりおろす。

カチョエペペ

2)沸騰した湯に塩を加えてパスタを茹でる。※ペコリーノの塩分があるのでここでは塩を控えめに(水2ℓに対して小さじ1.5杯程度)

カチョエペペ

3)フライパンに黒コショウを入れ、パスタのゆで汁をお玉3杯ほど加えて中火で加熱し、ゆで汁に胡椒の香りを移す

パスタのゆで汁はパスタを入れた直後ではなく軽く泡が出てからにしてください。理由はレシピの下で詳しくかいています。

カチョエペペ

4)パスタのゆで汁をペコリーノに加えて泡立て器でよく混ぜる。ゆで汁は一度に加えず3回ほどに分けて加える。加えるゆで汁の量はペコリーノの1~1.2倍ほどになるように。100gのペコリーノに対して100-120㎖のゆで汁が理想的です。ここでしっかりと混ぜないと後でチーズが塊になってしまう原因となりますのでしっかりと混ぜて下さい。イタリアでは人によってこの工程をミキサーで行う人もいます。

カチョエペペ

5)パスタのゆで時間の2分ほど手前になったらパスタをフライパンに移し、アルデンテになるまでフライパンを揺すりながら火を通す。その後、火を消して10–20秒ほど軽くフライパンの熱を冷ます

カチョエペペ

6)ペコリーノのソースを加えてフライパンをゆすりながらよくパスタとソースを混ぜ合わせる。火は必ず消しておく。絶対にチーズに火を通さないこと、溶けて塊となってしまします!お皿にパスタを移し、仕上げにさらにペコリーノを削り下ろして出来上がり。

ペコリーノとクリーミーなソースの秘密について

冒頭でも述べたけれどこのカチョ・エ・ペペの一番難しいのが滑らかなソースを作ることでこれは本場のイタリア人も難しいと感じているところ。

まず、チーズというのは水分を含むフレッシュチーズの方が高温でなくても溶けやすく、反対に熟成期間が長く水分の少ないパルミジャーノ・レッジャーノなどは高い温度でないと溶けません。

重要なのはペコリーノチーズと水分をある温度でよく混ぜ合わせて水分と乳化させ、とろりと溶けやすい状態にすること。この時の水温は55℃くらいで一番滑らかなクリームとなり、そして65℃を超えると今度はチーズのタンパク質が固まってきてしまうんです。

イタリアでも一番やってしまう失敗というのがこれ、チーズをクリーミーにしようとして火を通してしまうこと。これをやってしまうとクリーミーどころかチーズが固まってしまい悲惨な出来になってしまうので要注意。このチーズが塊になってしまう現象を防ぐのに活躍するのが “パスタのゆで汁”。ゆで汁に含まれるでんぷん質がタンパク質の凝固を遅らせる役目を果たすんです。

余談だけれど、滑らかなチーズ料理と言えばチーズフォンデュ。チーズフォンデュにもグリュイエールチーズやエメンタールチーズの他にコーンスターチなどのデンプンが加えられているんです。※チーズフォンデュでは白ワインの酸もチーズの凝固を防ぐ役割をしています。

材料はペコリーノチーズと黒コショウだけなので簡単と思われがちなこのカチョ・エ・ペペ。

でも実はこの一皿にはこんな化学も潜んでいるのだから料理というのはなかなか奥が深いものですね。