イタリア家庭料理の定番中の定番、茄子のパルミジャーナ。
このとっても美味しい料理について、本場イタリアより解説したいと思います。
茄子のパルミジャーナとは?
茄子のパルミジャーナ(parmigiana di melanzane)とは薄切りにして揚げた茄子、トマトソース、モッツァレラチーズ、そしてすりおろしたパルミジャーノ・レッジャーノを層になるように重ねて焼き上げたイタリアの家庭料理。
家庭によって使うチーズはモッツァレラではなくスカモルツァに変わったり、特に南イタリアではカチョカヴァッロというセミハードタイプのチーズで作ったりといろいろなバージョンがあります。
そして茄子は素揚げ、軽く小麦粉をまぶして揚げる、溶き卵と小麦粉の衣をつけて揚げる、といったパターンがあり、そのあたりのアレンジはそれぞれ軽く仕上げたい、しっかりボリュームを出したいなどの気分で変えてOK。
茄子のパルミジャーナを美味しく作るコツ
この茄子のパルミジャーナを作るときに重要なポイントは茄子の下処理。
日本では茄子のあく抜きは水にさらすやり方が主流だけれど、イタリアで茄子のあく抜きは塩をふるやり方。
茄子に軽く塩をふってしばらくおくと灰汁を含んだ黒い水分がいっぱい出てきます。このように灰汁とともに水分をしっかり抜くのが美味しく仕上げるポイント。
しっかりと水分を抜いた茄子は油をほとんど吸いません。少ない油でカラッと揚げられるので以外にも油っぽくならないんですよ。
そう、余談だけれどこの茄子のパルミジャーナ、名前のパルミジャーナ(parmigiana)とは ”パルマの、パルマ風の” という意味。でも意外にもこの料理の発祥は北イタリアのパルマではなく南イタリアのシチリア生まれという説が有力。※発祥には諸説あり、パルマ発祥という説もあります。
ではなぜ “茄子のパルミジャーナ” という名前がついたのか?
そのあたりの物語については、
レシピの後で 詳しーく お話しますね。
茄子のパルミジャーナの作り方
材料 (4-5人分)
- 米ナス 3本 (日本の普通の茄子なら5本ほど)
- モッツァレラ 300g
- パルミジャーノ(すりおろしたもの) 100g
- トマトピューレ 400㎖ (トマト缶なら2缶ほど)
- 玉ねぎ ½個
- にんにく 1片
- バジルの葉 数枚
- 薄力粉 少々
- EVオリーブオイル(トマトソース用) 適量
- 揚げ油(茄子用) 適量
- 塩
作り方
1) (茄子のアク抜き)茄子はヘタをとり7ミリ程度にスライスする。バットなどの容器にキッチンペーパーをひいて茄子を並べて両面に塩を軽くふる。上からもキッチンペーパーをかぶせ、さらに塩をふった茄子のスライスを並べていく。
2) (茄子のアク抜き)キッチンペーパーをかぶせてまな板などの重しを乗せてそのまま1時間ほどおいてあく抜きをする。
3) (モッツァレラの水切り)モッツァレラを1㎝ほどにスライスしてキッチンペーパーで挟み、そのまま30分ほど置く。
※モッツァレラチーズは水分を多く含むチーズ。そのまま焼くと水分が大量に出て水っぽくなってしまいます。なのでモッツァレラをオーブン料理に使う時、イタリアでは必ずこうして水切りをするんですよ。
4) (ソース作り)玉ねぎとニンニクをみじんぎりにする。フライパンにたっぷりのオリーブオイルを入れて玉ねぎを弱火で5分ほど透明感が出るまで炒める。
5)(ソース作り)トマトピューレ(もしくはトマト缶)とバジル、塩を加えて20分ほど煮る。※ホールトマトを使う場合はあらかじめ潰してピュレ状にして下さい。
6) あく抜きが出来た茄子は水分をキッチンペーパーで丁寧にふき取り薄力粉をまぶす。余分な粉ははたいて落とす。
7) 180℃の油で茄子をからりと揚げる。揚げたら油をよく切っておく。※水分を抜いた茄子は油をあまり吸いません。少ない油で十分揚げれます。
8) 耐熱皿に5のトマトソースを塗る。
9) 茄子を並べる。
10) モッツァレラとパルミジャーノを並べる。
12) ステップ8-10を繰り返して層にしていく。最後は上からトマトソース、たっぷりのパルミジャーノに小さくちぎったモッツァレラをいくつか散らす。180℃に予熱したオーブンで30分ほど焼いたら出来上がり!
※オーブンから出して5-10分ほど軽く冷ますと、モッツァレラの伸びが落ち着くので切り分けやすく、美味しいですよ!
パルミジャーナの名前の由来と歴史
冒頭で書いたように、この茄子のパルミジャーナ、イタリア語では “parmigiana di melanzane (パルミジャーナ・ディ・メランザーネ)” と呼ばれます。
メランザーネ(melanzane)とは茄子のことで、パルミジャーナとは “パルマの、パルマ風の” という意味。
けれど、この料理を”茄子のパルマ風” とするならばイタリア語では “melanzane alla parmigiana(メランザーネ・アッラ・パルミジャーナ)” とするのが本当は(文法的にも)正しい言い方。
このように呼ぶこともあるのだけれど、イタリアではこの料理はパルミジャーナ・ディ・メランザーネ(parmigiana di melanzane)の名前で呼ぶほうがどちらかと言えば多いんです。
ではなぜこの料理は茄子のパルミジャーナという名前になったのか?
いったいどこで生まれた料理なのか?
さてこの起源を紐解くときにまず考えることは、1400年代にアラブ人によってシチリアに茄子がもたらされたということ。そしてイタリアではかつて茄子のことを ”ペルシャのもの” という意味で “ペトロンチアーナ(petronciana)” と呼んでいたということ。
実際にイタリア料理の父と言われるペッレグリーノ・アルトゥージは彼の著書(1891年)で茄子のことをペトンチャーニ(petonciani)という名で書いていて、この茄子のパルミジャーナのことをトルティーノ・ディ・ペトンチャーニ(tortino di petonciani)という名で紹介しています。
そのペトンチャーニ、ペトロンチアーナが時代とともに響きの似ていた “パルミジャーナ” に変わっていったとされる説があります。
そしてもうひとつの有力な説は茄子とソースを層にして焼き上げるこのフォルムがイタリアのペルシアーナ(persiana)という雨戸の形に似ていたからという説。
どちらの説もパルマとは何の関係もなく、言葉の響きの類似からこの名前になったということがわかります。
そして現在のイタリアではこの茄子のパルミジャーナにはモッツァレラを使う家庭が多いけれど、このようなモッツァレラを使ったスタイルになったのはやはりナポリから。なのでナポリ起源説もあるんです。
ではパルマはこのパルミジャーナと全く関係ないのかというと、もちろんパルマ発祥説も存在します。
どんなものかと言えば、パルマの人は野菜を層にした料理をするのが上手かったことからパルマ風(パルミジャーナ)という名前がついたというもの。ただ、この説は少々強引な気もしますが。。。
さて、こうして長々と語源、発祥について書いたけれど、現在のイタリアではイタリア半島北から南まで “家庭料理” としてどの地域でも作られている この茄子のパルミジャーナ。
そして地域によって、家庭によって本当にいろんなレシピが存在するんです。
そう、結局のところイタリア人にとっては “マンマの作る茄子のパルミジャーナ” が一番正しく、美味しいのでしょうね。
料理に唯一の正解はない、と歴史を紐解いてつくづく思ったのでした。