カポナータ(パレルモ風)

カポナータ caponata siciliana

南イタリア、シチリアの茄子料理の定番料理の一つがこのカポナータ。

次からこのとっても美味しい料理について詳しく解説していきますね!

カポナータとは?

カポナータ(caponata)とは茄子などの野菜を揚げたものを砂糖、酢で甘酸っぱく絡めた南イタリア、シチリアの郷土料理

使う野菜は茄子をメインにパプリカを加えたり、レーズン、松の実、アーモンドを加えるレシピもあったりと家庭や地域によっていろんなバリエーションがあります。

カポナータで一番有名なのはシチリア北西部のパレルモ風。パレルモ風のカポナータは素揚げした茄子、オリーブ、セロリをトマトソースで煮て砂糖と酢で仕上げたもの。

とは言ってもカポナータは家庭によってレシピが様々、○○風と区切ったところでそれに当てはまらないレシピがいっぱいの自由なスタイルの料理と言ってもいいかもしれません。

カポナータを美味しく作るコツ

このカポナータを美味しく仕上げるコツの一つに茄子のあく抜きがあります。

イタリアでは茄子のあく抜きは塩をまぶす方法なのですが、このやり方をすると茄子を素揚げしても油をほとんど吸いません。

そのため揚げ茄子の美味しさがあるのに油っぽくない美味しいカポナータが出来るんですよ。

ラタトゥイユとの違いは?ヨーロッパのいろいろなカポナータ

ヨーロッパの地中海沿岸の地域ではカポナータとよく似た料理が沢山あり、日本でもよく知られたものにフランスのラタトゥイユがあります。

カポナータとラタトゥイユの大きな違いは味付け

ラタトゥイユは茄子やズッキーニやパプリカなどの野菜とトマトで煮込む料理ですが、シチリアのカポナータは砂糖と酢で甘酸っぱく仕上げる特徴があります。

またスペインにも同じような野菜の煮込み料理でピスト・マンチェーゴ(pisto manchego)がありますが、これもカポナータのような甘酸っぱい仕上げではないのでラタトゥイユと同じような料理になります。

さてこのカポナータ、今では茄子の料理として知られていますが茄子がアラブ人によってイタリアにもたらされたのは15世紀ごろのこと。ところがこのカポナータという名前の由来をたどっていくとそれよりももっとずっと以前に語源があるようで。。。

では一体カポナータとはどういう意味なのか?

いつ頃から存在している料理なのか?

その辺のストーリーは、レシピの後でお話ししますね。

カポナータの作り方

材料(3-4人分)

  • 茄子 3本
  • 玉ねぎ 小1個
  • セロリ 2本
  • トマトピューレ 200㎖(or トマト缶½個)
  • 松の実 大さじ2杯ほど
  • オリーブ 20粒ほど
  • 塩漬けケイパー 15粒ほど ※塩は水で洗い流しておく
  • バジルの葉 数枚
  • 砂糖 大さじ1
  • 白ワインビネガー 大さじ1
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 揚げ油 適量
  • 塩 少々

作り方

カポナータの作り方 caponata siciliana

1)茄子はひと口大にカットし塩を軽くまぶして混ぜ合わせ、30分ほどそのままおいてあく抜きをする。※茄子から黒い汁が出てきますがそれが茄子のあくです。

カポナータの作り方 caponata siciliana

2)玉ねぎ、セロリは薄くスライスする。オリーブオイルを入れた鍋で玉ねぎとセロリをしんなりとするまで弱火で炒める。

カポナータの作り方 caponata siciliana

3)鍋にオリーブ、塩を落としたケイパー、松の実、トマトピューレ、バジルを入れて10-15分ほどトマトの水分を飛ばすように炒め煮する。※トマト缶を使う場合はあらかじめフォークでトマトを潰しておく。※ケイパーや後で加える茄子の塩分があるのでここでは塩は加えず、仕上げに様子を見て塩を加えて下さい。

カポナータの作り方 caponata siciliana

4)あく抜きした茄子は水でさっと洗って軽く絞り、キッチンペーパーで水気を拭く。

カポナータの作り方 caponata siciliana

5)茄子を揚げる。揚げたら油を切っておく。※塩で水分を抜いた茄子は油をあまり吸いません。少ない油で十分揚げられます。

カポナータの作り方 caponata siciliana

6)揚げた茄子をトマトソースの鍋に加えて軽く混ぜる。

カポナータの歴史と名前の由来

カポナータの名前の由来には諸説あり、一番よく知られているのが貴族達がカポーネ(capone/和名シイラ)という魚を甘酢で仕上げた料理を庶民が野菜を使って真似たものではという説。

シチリアがスペインの支配を受けていた時代、貴族達が食べていたカポナータは魚介類を甘酢で仕上げたもので今のように茄子がメインのカポナータとは随分違ったものだったよう。

それを庶民が野菜で真似て作っていたのが今のカポナータになったのではないかというもの。

実際に1839年にイッポリト・カヴァルカンティ(Ippolito Cavalcanti)が記したカポナータはカリっと焼いたパンを甘酢で湿らせてこのカポーネなどの魚やキュウリ、レタスなどを乗せたものとあります。

このイッポリト・カヴァルカンティという人物、実はナポリの人。

そう、カポナータってシチリア料理だけれど、実はナポリにもカポナータが存在するんです。どんなものかと言えばフリセッレなどの固いパンにオリーブオイル、トマトやバジルやオレガノ、アンチョビなどを乗せたもの。シチリアのカポナータとは全く異なります。

もっと時代をさかのぼってローマ時代のオステリア(大衆食堂)を意味するcauponaが語源なのではないかという説は、オステリアで出されていたパンにケイパーやオリーブオイル、酢をつけて食べていたものがカポナータの原型なのでは?というもの。

ナポリのカポナータやローマ時代のオステリアのパンの食べ方を語源とする説を考えると、カポナータという料理は野菜の煮物というよりもパンが重要だったのかもしれませんね。

実際にこのシチリアのカポナータもパンがよく添えられます。

それ以外にもギリシャ語で“切る”を意味する captoから来ているのでは?という説もあります。

なぜシチリアでギリシャ語かと言うと、紀元前から古代ローマが繁栄するまでシチリアへ力を及ぼし、影響を与えていたのはギリシャ。

まさかカポナータの原型が紀元前からあったとはさすがに思わないけれど、材料を同じような大きさに “切る”  のがこのカポナータのそもそもの起源だと仮定するならば、カポナータはものすごいバラエティーに富んだ料理として結局なにをもって“カポナータ” と呼ぶのかわからなくなってしまう、そんな語源の深い謎に迷い混んでしまいます。

と、まぁ今回もいろいろと歴史をたどってみたけれどカポナータがこのように広まり、愛される理由はやっぱり “シンプルで美味しい” から。

まぁ、結局、とどまることろはこれに尽きますね。(笑)