外国を旅する時に現地の友人がいるとその旅は通常の観光よりぐっと濃いものとなる。
表明的な観光だけでなく現地の暮らしを教えてもらったり、手作りの家庭料理をご馳走になったり、はたまたガイドブックには書かれていない街の現状なども知れるからだ。
私達一家にとっては第二の故郷とも言えるブダペストを初めて訪れた時のことを少し書いてみようと思う。
夫の親友でブダペストに暮らすアッティラ一家に初めてお邪魔したのは2013年の10月末のことだった。
夫はもう何回も訪れているので(かれこれ10回の訪問を超えた)特に観光がしたいわけではなかったが私にとっては初めての街。
やはりドナウの真珠と呼ばれる街がどれほど美しいのかを見て回りたかった。
そんな私の要望に全力で観光ガイドを務めてくれたアッティラに感謝の言葉が尽きない。
ブダペストが輝きだす時間・夕暮れ
国会議事堂やドナウにかかるくさり橋などは日中に見ても素晴らしいけれどその美しさが一段と増すのはやはり夕暮れから夜。
ブダペストはドナウ川を挟んで西岸がブダ地区、東岸がペスト地区となる。飲食店やお店が集まり賑わいを見せるのがペスト地区、漁夫の砦やマチャーシュ教会、ブダ城などの見どころが集まっているのがブダ地区となる。
またブダ地区はペスト地区よりも高い位置にあるので街全体を見渡せることができる。そのため毎日夕刻になると多くの観光客が美しい夜景を見ようと集まってくるそうだ。
夕方家を出た私達も車でこのブダ地区までやってきた。
刻一刻と色を変えていくブタペストの街を晩秋の夜の寒さに備えていなかった私は凍えながら眺めていた。
日も沈み、鎖橋や国会議事堂がライトアップされると街は宝石箱のように輝きだす。
高台にあるビューポイントへやってくるとその美しさに息をのむ。
街を照らすライトがドナウの水面に映り、極上の景色を作り上げていたのだ。
しばらくこの美しい夜景を眺めていた後、再び車で川を渡りペスト地区へ。
国会議事堂を間近に見るためだ。
ドナウ川添いにしばらく写真を撮りながら歩いていると、いよいよ寒さに耐えれなくなってきた。
冷え切った手をさすりながら私達はこの美しい景色を後にした。
ハンガリーグルメを巡る
-ブダペストのカフェ文化
ボリュームたっぷりのハンガリーの朝食の途中、アッティラのお母さんが
「素敵なカフェがあるから後で行ってみない?」と誘ってくれた。
普通のおしゃれなカフェを想像していた私は連れてきてもらったその場所に驚いた。
1階は普通の本屋なのにエスカレーターで上に上がると目の前に広がるエレガントな空間。
グランドピアノの生演奏を聴きながらの朝カフェ。なんと贅沢な時間だろう!
ブダペストはウィーンに次いでカフェ文化が花開いた街。
現在でもその歴史をこうして優雅なカフェで堪能することができる。
-中央市場
ハンガリー料理に欠かせないものと言えば、サラミ、そしてパプリカ。
このブログのレシピでお気づきの方もいるかもしれないが我が家のレシピにはパプリカパウダーがよく登場する。
アッティラがミラノに来るたびに持ってきてくれるのだ。
イタリア料理でも使うこともあるがハンガリー人のパプリカ消費量には到底かなわない。
市場は一階が野菜やサラミなどを扱う商店が集まり、2階ではハンガリー名物のスナックが食べれるフードコートのような作りになっている。また多くの人が見落としがちな地下では同じくハンガリー名物のチョロマーデ (csalamádé)と呼ばれる野菜の酢漬けをうっているお店が並んでいた。このチョロマーデ、可愛く人形型にカットされ、瓶詰されていたので思わずパチリと写真をとる。
お土産を買いながら歩いているとお腹が空いてきた。お昼時、2階のフードコートは地元の人や観光客やらでごった返していたがなんとか場所を確保しハンガリーの揚げパン、ランゴシュ(lángos)を。
その後、ペスト地区をぶらりと散策し陽が沈む頃に家へと帰って行った。
-ハンガリーの家庭料理、グヤーシュ
家に着くとアッティラのお母さんがハンガリー料理のグヤーシュを作って待ってくれていた。
グヤーシュレシピのところでも書いたけれど本場ハンガリーでは一般的に知られるグヤーシュはペルケルトと呼ばれる。
本物のグヤーシュはこの素朴なスープのことだ。
レストランでのハンガリー料理ももちろん美味しいけれど、ブダペストに行く度に私が一番楽しみにしているのは実はこの素朴な手作りのスープでもあったりする。
一日の終わりにホッとするスープで身も心も温まった夜だった。
温泉大国ハンガリー
海外に住む日本人にとって恋しいものは何かと訪ねたら日本食に続いて温泉と答える人が多いと思う。
しかし嬉しいことにミラノから飛行機で1時間ほどで来れるこのハンガリーは言わずとしれた温泉大国なのだ。
この日はブダペストでぜひ行ってみたかったセーチェニ温泉(Széchenyi)へ。
温泉といっても水着で入る温水プールのような感覚だけれど湯はもちろん温泉。
地元のおじいさんたちが湯に浸かりながらチェスをしている光景が名物となっている。
屋外の大きな浴槽の他には屋内にも趣の異なる浴槽がいくつもあり私は久しぶりの温泉を何時間も楽しみこの旅を締めくくった。
この旅の後、私はブダペストを再度訪れたがあの夜景は何度見ても心揺さぶられる美しさだ。
そしていつも温かいスープとともに出迎えてくれるアッティラ一家が私達にとってはブダペストで一番の魅力となっているのは言うまでもあるまい。