スズキのアクアパッツァ

アクアパッツァ branzino all'acqua pazza

日本でも広まってきたイタリア料理の一つ、アクアパッツァ。

次からアクアパッツァの本場イタリアより、日本ではちょっと知られていない事実も含めて解説していきますね!

イタリアのアクアパッツァとは?

アクアパッツァ(acqua pazza)とはイタリア語で狂った(=パッツァ)水(=アクア)という意味。どんな料理かと言えば鯛やスズキ、鱈などの白身魚をニンニク、オリーブオイル、トマトと一緒にフライパンで豪快に煮たもの。

もともとは南イタリアのシンプルな漁師料理で、とれたて新鮮な魚を海水を使って料理したのが始まりだそう。ここへ、南イタリア料理には欠かせないトマトを加えるのが現在の定番でブラックオリーブ、ケイパー、イタリアンパセリやオレガノなどを加えるパターンもお馴染みです。

『新鮮な魚に海の塩、そしてトマト』ってそれは絶対に美味しいな、と想像できますね。

日本とイタリアのアクアパッツァの違いとは?

ちなみに日本で見るアクアパッツァはよくアサリなどが入っていますが、イタリアのアクアパッツァはメインの魚以外に他の魚介類を加えることはあまりなく、意外にもとてもシンプル

なので気負わずにパッと作れるのがうれしい、そんなイタリアの家庭料理です。もちろん、アサリなどの貝類を加えるとグンとうま味が増すのであれば加えても美味しいですよ。

日本ではこんな感じで貝類と煮込むのが一般的ですよね。

インスタグラムではこんな “ズルい” アクアパッツァの作り方も載せています(笑)。

ちなみに日本式アクアパッツァのように魚にアサリやムール貝などいくつかの魚介類を組み合わせた料理はイタリアでは “魚のスープ” という意味のズッパ・ディ・ペッシェ(zuppa di pesce)ブロデット・ディ・ペッシェ(brodetto di pesce)の料理名の方が一般的。これもとても美味しいイタリアの魚介料理です。

また、“アクアパッツァはナポリ料理” とよく言われるのですが、ナポリのあるカンパーニア州やシチリア州、プーリア州といった南イタリアでよく作られる料理です。

アクアパッツァという料理名で呼ばれるのはナポリですが、南イタリアの他の地域では “魚の水炊き” という意味のペッシェ・イン・ウーミド(pesce in umido)と呼ばれたりします。

アクアパッツァは “飛び跳ねる水” が語源?

ところでこの豪快かつシンプルで最高に美味しいアクアパッツァ。

なぜこんな名前がついたのでしょうか?

・狂うほどに美味しいから?

・オリーブオイルに水を加える時に狂ったように跳ねるから?(この説がなぜか日本では有名ですね。)

実はちょっと違うんです。

この語源を探っていくと、どうやら狂っているのは “水” というよりも他の “あるもの” のようで、、、。

さて、そのクレイジーなものとは一体何なのか?

その辺の事情については、レシピの後で詳しくお話しますね。

アクアパッツァの作り方

アクアパッツァの作り方は実はとても簡単です。

切り身ではなく骨ごとの方がうま味が出ますが、手軽に鯛やスズキ、鱈などの白身魚の切り身で作ってももちろん美味しいですよ。

どうぞ気負わずに作ってみて下さいね!

材料 (2人分)

  • スズキ(20-30㎝程度のもの) 2匹 ※鯛や鱈などでも
  • ミニトマト 20粒程度
  • ニンニク 2辺
  • オレガノ 少々(or イタリアンパセリ)
  • ケイパーやブラックオリーブなど 適量
  • 白ワイン 150ml
  • 水 200ml
  • EVオリーブオイル 適量
  • 塩 少々

作り方

スズキのアクアパッツァ branzino all'acqua pazza

1) スズキは内臓とうろこをとって流水で丁寧に洗いぬめりを落とす。水気をキッチンペーパーでよくふき取る。塩を皮目にはしっかりと、腹の中には軽くふりニンニクのスライスも入れる。腹の両面に包丁で切れ目を入れる。※今回は一度冷凍し、解凍した魚を使っているため頭は切り落としていますが新鮮なものならおぜひお頭付きで作って下さい。

スズキのアクアパッツァ branzino all'acqua pazza

2)フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて火をつける。フライパンが熱くなったら全ての材料を入れてスズキの皮を焼き付ける。※切り身を使う場合は皮目から入れて焼き付けて下さい。※乾燥オレガノ入れる場合はここで、イタリアンパセリの場合は仕上げに入れて下さい。

スズキのアクアパッツァ branzino all'acqua pazza

3)スズキを裏返してもう片面も焼き付ける。

スズキのアクアパッツァ branzino all'acqua pazza

4)白ワインを加えて強火でアルコールを飛ばした後に水を加えて火加減を弱め、15分ほど、途中で一度スズキを裏返して煮たら出来上がり!※水の量は魚が¹⁄3ほど浸かる量を入れて下さい。※イタリアンパセリを使う場合は仕上げにパッと散らして下さい。

アクアパッツァの名前の由来とナポリの関係

上でも書いたようにアクアパッツァはナポリの料理として知られますが、なぜ南イタリア全体で一般的なこの料理がナポリ料理として広まったのでしょうか?

これは1950年代に活躍したナポリ出身の映画俳優、トトー(Totò)の影響が大きいと言われています。というのも彼が魚をトマト、ニンニクと煮るこの料理が好きでレストランでよく注文していたそう。このトトーの影響でアクアパッツァがナポリ料理として広く知られるようになったと言われています。

アクアパッツァの名前の由来

さて、“狂った水” というなんともユニークな名前のこの料理、なぜこんな名前がついたのでしょうか?

冒頭で書いたように、アクアパッツァという料理名はナポリからと言われています。

この名前の由来、日本では「水が狂ったように跳ねるから」とよく言われますが、この説って実はイタリアではあまり聞かないんです。

名前の由来には諸説あり、もちろん上の“狂ったように跳ねる水だから”という説だって否定はできません。この説だってそれっぽいですよね。

では、イタリアで聞く『アクアパッツァの名前の由来』とはどんなものがあるのか?

有名なものは、

『1800年代の塩に対する増税』による説

1800年代後半、イタリアでは塩に対する大幅な増税が行われました。その時にナポリの飲食店が高価な塩の代わりに海水を普通の水と混ぜて使って料理を作ったのが始まりとする説。

「海水を塩の代わりに使うなんて!アクアパッツァ(クレイジーな水)だ!」

と、なったとか。ナポリの人々ってこういうユーモアというかクレイジーな発想が本当に豊か。いろんな面白いアイディアで困難を乗り切ってきたナポリらしい説と言えるでしょう。

他にもクレイジーな値段の塩と水を使う料理だからアクア(水)パッツァ(狂ってる)だからだとか。

その他の説はナポリでは『沢山の塩は人をクレイジーにさせる』(のどが渇いて気がおかしくなる、身体によくない)という意味で  “troppo sale fa ascì pazz’ (トロッポ サーレ ファ シー パッツィ)”  と言ったりします。そこから海水を使ったこの料理をアクアパッツァと呼ぶようになったとか。

などなど。

いろいろな説を見ていくと、どうも狂っているのは、水よりも “塩”、や “塩の値段” のような気がしてきます。そしてその “狂った塩の水“、つまり海水を使うからアクア・パッツァなのか???

けれどイタリアでも本当のところは実は誰にもわからないんです。

一体どこの、誰が、アクアパッツァと呼びだしたのか?

探れば探るほど謎は深まるばかり。

でも、

『シンプルで美味しいアクアパッツァがみんな大好き』

これこそがこの料理に関するまぎれもない真実なんでしょうね。

きっと。