私達は一度旅した場所を再び訪れることはほとんどない。
なぜならまだ他にも行ってみたい場所が沢山ありすぎるから。
もちろん素敵な場所はまた訪れたいと思うけれど、
いざ目的地を決めるときに ”まだ行ったことのない場所を見てみたい” という気持ちが勝ってしまう。
しかし前回書いたハンガリーのブダペスト、そしてこのドイツのレゲンスブルグは別だ。
それは旅の目的が観光ではないから。
そう、”大事な友人に会う” ため。
2015年の12月、クリスマスムード一色となるレゲンスブルグ、そしてロマンチック街道のハイライトとも言われるローテンブルグを旅した時の事を少し書いてみようと思う。
レゲンスブルグ・グリューワイン片手に歩く中世の街
私の大事な友人であるヴェレーナの一家が暮らす街、レゲンスブルグ。
今回の訪問は2回目だったので彼女の家にも迷うことなく着いた。
車から荷物を降ろし、お互いの近況報告しながら久しぶりの再会を喜ぶ私達。出会った時は二人ともシングルだったのに今やどちらもお母さんとなっている。
長いおしゃべりが終わるともう辺りは薄暗い。さぁ、ダウンコートの下にフリースも着込んで寒さ対策をしっかりし、お楽しみのクリスマスマーケットへ!
しっかりと着込んでいてもやはり12月のドイツの夜の空気は刺すように冷たい。
クリスマスマーケットでどこでも見かけるグリューワイン (glühwein) と呼ばれるホットワインをまずは1杯。
赤ワインにオレンジピールやシナモンなどのスパイスを入れて温めたもので、子供用にアップルジュースで作ったノンアルコールのものもある。陶器の可愛いカップに入れてくれて、カップを返却すれば1ユーロほどが帰ってくるというのが大抵の街で共通のシステム。もちろん返却せずにお土産として持って帰ってもいい思い出となる。
クリスマス用の飾りなどを買いつつ街歩きをしていたけれど、1時間ほどで散策を終了した。
防寒対策をしているとはいえ、小さな子供を長時間寒空の下で連れまわすわけにはいかなかった。
バイエルンの夕食・シュヴァイネハクセ
お楽しみの夕食、ヴェレーナが何時間もかけて作ってくれていたのはなんとバイエルン名物のシュヴァイネハクセ。
豚のすね肉を使ったドイツらしい豪快な一皿だ。
他にもドイツの家庭料理、クネーデルと言うパンと卵とチーズでつくるお団子も用意してくれていた。
彼女のレシピはまず圧力なべで調理してからオーブンに入れるそうだ。このすね肉もヴェレーナ一家が信頼するお肉屋さんで調達してくれたもの。
ドイツのバイエルン地方は今回を含め何回か旅したことがあるが、ヴェレーナが作ってくれたこのシュヴァイネハクセほど美味しいのを後にも先にも食べたことがない。
クネーデルと共にかなりのボリュームだったけれどすんなりと完食してしまうほどの美味しさだった。
そして横ではしゃぐ子供達を眺めつつ尽きることのないおしゃべり。
レゲンスブルグでの夜はこうして更けていった。
ローテンブルグ
― おとぎ話の世界に迷い込む
翌朝もう一度レゲンスブルグの街を散策した後、ヴェレーナ一家に別れを告げ、お昼過ぎにローテンブルグへと向かった。
ローテンブルグは同じくバイエル州の都市で周囲を城壁に囲まれた城塞都市。
街に到着し、旧市街へと入る門のところで交通整理の警官がいたのでホテルの名前を告げる。すると
「この門を抜けて中心部へ行きなさい。」
とのこと。
指示通り門を通り抜けるとすぐさまその観光客の多さに驚いた。
人が多すぎて車が前へ進めない。歩行者天国の道に間違えて入ってきてしまったのではないかと不安になる私達。それでもなんとかホテルを見つけて駐車し、チェックインを済ませる。
私はホテルに着くまでに車の中から見た街の景色にすでに興奮気味。すぐにでも街を散策したくてたまらなかった。
なんて可愛い街なんだろう!
木組みの家々が特徴的な中世の街並み、おとぎ話の世界そのものだ。
そして夕暮れ
このローテンブルグの街にクリスマスの魔法がかかる
明るく、そして温かい光は街を優しく包み込んでいた。
散策途中、クリスマスグッズを扱うお店を見つけたのでちょっと覗いてみることにした。しかし中に入って驚いた、お店というよりミュージアムだ。後で知ったことだがローテンブルグで有名なケーテ・ウォルファルト(Käthe Wohlfahrt)というお店らしい。
そしてもう一つ驚いたのが観光客の大半が日本人とイタリア人(イタリアはちょうど連休中だったため)だったこと。
それを見た夫と
「我が家はそのハイブリッド型ね。」
と、笑った。
― 日中の散策
翌日、私達はもう一度街を歩いてみることにした。幸いなことにローテンブルグでの2日間は冷え込むこともなく日中はコートを脱いでも平気なくらいだった。
ローテンブルグの街は小さく、徒歩で十分散策できる。ブルグ公園を散歩したり、市庁舎に上って街を眺めてみたり、また街を囲む城壁を歩いてみた。歩いていると少し汗ばんでくるくらいの陽気だ。
冷え込むレゲンスブルグの夜に飲んだグリューワインの温かさが少し恋しい。
昨晩もグリューワインをクリスマスマーケットで飲んでみたけれどやはり冷え込むなかでいただくからこそ、その味は思い出深いものとなる。
そうして街をぐるりと歩いた後、私達はミラノへの帰路についた。
あとがき
今この旅行記を書いているのは11月。ミラノの街もクリスマスムードが日に日に増してくる。
あの中世の街並み、イルミネーション、凍える寒さ、そしてヴェレーナが作ってくれたシュヴァイネハクセ。
毎年クリスマスが近づく度に思い出すのはこのレゲンスブルグとローテンブルグの旅。
そうそう、ヴェレーナの家にお邪魔したあの日、夕食の後になんとサンタクロースがベランダからやってきた。
ドイツでは12月6日、聖ニコラウス(サンタクロースの起源となった司祭)の日に子供達はプレゼントをもらえるのだ。
実はそのサンタに扮していたのは私の夫。
お腹にクッションも詰めて、なかなか立派なサンタになっていた。
子供達になにかサプライズをしようと4人の親でこっそりと仕組んでいたのだ。
まだ0歳だった私の娘は大泣きしてしまったけれど、ヴェレーナのやんちゃ坊主達は大喜び。
そのキラキラと輝く目をみてふと思った。
あの子達が大きくなっていつか親になった時、今度は彼らがその子供達のサンタクロースとなるのだろうか。
でもそれは、まだまだ先のお楽しみ。